「新リース会計基準」への対応は、企業の財務戦略を大きく左右する喫緊の課題です。従来のオフバランス処理から「オンバランス化」への移行は、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)だけでなく、財務指標や開示情報にまで広範な影響を及ぼすため、その複雑さや、先行するIFRS第16号との関係性に疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、新リース会計基準の導入背景から旧基準との違い、適用対象、そしてIFRS第16号との関係性まで、専門家が網羅的に解説します。この記事を読めば、新基準の全体像から、使用権資産・リース負債の計上、財務諸表への影響、プロシップなどのソリューションを活用した実務対応のポイントまで、貴社が取るべき具体的なアクションの道筋が明確になります。複雑な基準の理解から実務への落とし込みまで、この一冊で貴社の疑問を解消し、確実な対応をサポートします。
新リース会計基準とは何か その全体像を理解する
新リース会計基準の導入背景と目的
2026年4月1日以後開始する事業年度から適用が始まる新リース会計基準は、企業の財務報告の透明性を高め、国際的な会計基準との整合性を図ることを目的としています。この基準の導入には、主に以下の背景と目的があります。
まず、旧リース会計基準では、リース取引が「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に分類され、特にオペレーティングリースについては、リース料を費用として処理するのみで、資産や負債として貸借対照表に計上されない「オフバランス」処理が一般的でした。これにより、企業が多額のリース契約を抱えていても、その負債の実態が財務諸表に十分に反映されず、企業の真の財政状態が見えにくいという課題がありました。
このような状況は、投資家や債権者にとって、企業の信用力を正確に評価することを困難にし、財務諸表の比較可能性を損なう要因となっていました。特に、航空会社や小売業など、多額のリース資産を利用する企業では、その影響が顕著でした。
また、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)では、すでに2019年からIFRS第16号「リース」が適用されており、原則としてすべてのリース取引を貸借対照表に計上する「オンバランス化」が義務付けられています。日本基準も、この国際的な流れに沿い、IFRS第16号の考え方を取り入れることで、財務諸表の国際的な比較可能性を向上させ、グローバルな事業展開を支援する狙いがあります。
新リース会計基準の導入は、リース取引の実態をより正確に財務諸表に反映させ、企業の財政状態と経営成績の透明性を向上させることを最大の目的としています。これにより、投資家や債権者に対する情報提供が充実し、より適切な投資判断や与信判断に繋がることが期待されています。
旧リース会計基準との決定的な違い
新リース会計基準と旧リース会計基準の最も決定的な違いは、リース取引のオンバランス化の範囲にあります。旧基準では、特定の条件を満たすファイナンスリースのみがオンバランス処理されていましたが、新基準では、原則としてほとんどすべてのリース取引が貸借対照表に計上されることになります。
旧リース会計基準では、リース取引を「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2種類に分類し、それぞれ異なる会計処理を行っていました。
- ファイナンスリース(所有権移転ファイナンスリース、所有権移転外ファイナンスリース):リース物件の経済的実質が売買取引に近いと判断されるもので、リース資産とリース負債を貸借対照表に計上するオンバランス処理が原則でした。
- オペレーティングリース:ファイナンスリース以外のリース取引で、リース料を期間費用として損益計算書に計上するのみで、貸借対照表には計上しないオフバランス処理が原則でした。
これに対し、新リース会計基準では、「使用権モデル」という考え方を採用します。これは、リース契約によって企業がリース資産を一定期間使用する「権利」(使用権資産)と、その対価としてリース料を支払う「義務」(リース負債)を認識し、これらを原則としてすべて貸借対照表に計上するというものです。これにより、旧基準ではオフバランス処理されていた多くのオペレーティングリースが、新基準ではオンバランス処理の対象となります。
この変更は、企業の財務諸表に大きな影響を与えます。特に、これまで多額のオペレーティングリースを利用していた企業では、貸借対照表に使用権資産とリース負債が新たに計上され、総資産や負債の額が増加します。また、損益計算書においても、リース料が一括で費用処理されるのではなく、使用権資産の減価償却費とリース負債に係る金利費用として計上されるため、費用計上のタイミングや金額が変わります。
以下に、新旧リース会計基準の主な違いをまとめます。
| 項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| リース取引の分類 | ファイナンスリースとオペレーティングリースに分類 | 原則としてリース取引の分類は行わない(一部簡便処理を除く) |
| 会計処理の原則 | ファイナンスリースはオンバランス、オペレーティングリースはオフバランス | 原則としてすべてのリース取引をオンバランス化 |
| 貸借対照表への影響 | ファイナンスリースのみリース資産・リース負債を計上 | 使用権資産とリース負債を計上(ほぼすべてのリース) |
| 損益計算書への影響 | ファイナンスリースは減価償却費と支払利息、オペレーティングリースはリース料 | 使用権資産の減価償却費とリース負債の金利費用 |
| 適用除外 | なし | 短期リース、少額リース(簡便処理) |
適用対象となる企業と適用時期
新リース会計基準は、原則としてすべての企業に適用されることになりますが、適用開始時期は企業の規模や上場区分によって異なります。また、一部のリース取引については、重要性の観点から適用が除外されるか、簡便な処理が認められています。
具体的な適用時期は以下の通りです。
- 上場企業およびその子会社・関連会社:
2026年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用となります。例えば、3月決算の企業であれば、2027年3月期から適用が開始されます。
- 非上場企業(中小企業を含む):
2028年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用となります。これは、非上場企業が新基準への対応に十分な準備期間を確保できるよう、上場企業よりも遅い適用時期が設定されたものです。
なお、これらの適用時期よりも早期に新リース会計基準を適用することも可能です。企業は自社の状況や準備体制に応じて、任意の時期から新基準を適用することができます。
新リース会計基準の適用対象となるリース取引は、原則として「リース期間の開始日に、企業が原資産を使用する権利を支配している」と判断されるすべてのリース契約です。ただし、以下のリース取引については、簡便な会計処理が認められています。
- 短期リース:
リース期間が12ヶ月以内であるリース取引です。これらのリースについては、リース料を発生時に費用として処理する簡便な方法を選択することができます。ただし、購入オプションが付帯している場合など、実質的なリース期間が12ヶ月を超える場合は対象外となります。
- 少額リース:
リース対象となる原資産の価値が少額であるリース取引です。具体的な金額基準は明確に定められていませんが、実務上は、原資産の取得価額が1件あたり数十万円程度(例えば、50万円以下)が目安とされています。これらのリースについても、リース料を発生時に費用として処理する簡便な方法を選択することができます。
これらの簡便処理は、企業の会計処理負担を軽減し、重要性の低いリース取引に過度な手間をかけないようにするための措置です。ただし、簡便処理を選択した場合でも、その選択が財務諸表の有用性を損なわないか、企業は慎重に判断する必要があります。
IFRS第16号との関係を徹底解説
日本の新リース会計基準は、国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)第16号「リース」の影響を強く受けています。この章では、IFRS第16号の概要から日本の新リース会計基準との具体的な相違点、そして新基準の根幹をなすオンバランス化の原則について、専門的な視点から詳しく解説します。
IFRS第16号の概要と新リース会計基準への影響
IFRS第16号は、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用された国際的なリース会計基準です。この基準の導入目的は、リース取引の実態を財務諸表に適切に反映させ、企業の財務状況や経営成績の透明性を高めることにありました。旧来のリース会計では、オペレーティング・リース取引が貸借対照表に計上されない(オフバランス)ことが多く、リースを利用する企業の負債が過小評価されるという問題が指摘されていました。
IFRS第16号では、この問題に対処するため、原則として全てのリース取引を貸借対照表に計上(オンバランス化)することを求めました。これにより、リース利用者はリース資産(「使用権資産」として認識)とリース負債を計上し、企業の負債総額がより正確に開示されることになります。この国際的な動向を受けて、日本においても企業会計基準委員会(ASBJ)が議論を進め、IFRS第16号の考え方を大幅に取り入れた新リース会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」)の策定に至りました。日本の新基準は、IFRS第16号と整合性を図りつつも、日本企業の実務に配慮した一部の差異が設けられています。
日本基準とIFRS第16号の主な相違点
日本の新リース会計基準はIFRS第16号をベースとしていますが、いくつかの点で相違があります。これらの相違点は、主に日本企業の実務への影響を考慮し、柔軟性を持たせるために設けられたものです。主な相違点を以下の表にまとめました。
| 項目 | IFRS第16号 | 日本基準(新リース会計基準) |
|---|---|---|
| 原則的な会計処理 | 原則として全てのリース取引をオンバランス化(短期リース、少額リースは免除規定あり) | 原則として全てのリース取引をオンバランス化(短期リース、少額リースは免除規定あり) |
| 短期リースの定義 | リース開始日においてリース期間が12ヶ月以下のリース | リース開始日においてリース期間が12ヶ月以下のリース |
| 少額リースの定義 | リース資産の基礎となる資産が少額(例:5,000米ドル以下)であるリース | リース資産の基礎となる資産が少額(例:30万円以下)であるリース。金額基準はIFRSより低い設定。 |
| リース負債の測定 | リース開始日における未払いリース料の現在価値。変動リース料は、指数やレートに連動する部分のみを対象。 | リース開始日における未払いリース料の現在価値。変動リース料は、IFRSと同様の取り扱い。 |
| 再評価の要件 | リース期間の変更、リース料の変更、残価保証額の変更など、特定の事象が発生した場合にリース負債を再測定 | IFRSと同様に、特定の事象発生時にリース負債を再測定 |
| 開示要求 | 詳細な定性的・定量的な開示を要求。特に、リース活動に関する将来のキャッシュフロー、変動リース料、割引率など。 | IFRSと比較して、開示項目が一部簡素化されているものの、IFRSに準じた情報開示が求められる。 |
このように、基本的な考え方は共通していますが、特に少額リースの定義や開示の細かさにおいて、日本基準はIFRS第16号よりも実務に配慮した形となっています。企業はこれらの相違点を理解し、自社の会計処理に適切に反映させる必要があります。
新リース会計基準におけるオンバランス化の原則
新リース会計基準の最も重要な変更点は、原則として全てのリース取引を貸借対照表に計上する「オンバランス化」です。これは、旧リース会計基準におけるオペレーティング・リース取引がオフバランス処理され、企業の負債が財務諸表に適切に反映されないという課題を解決するために導入されました。
オンバランス化の原則により、リース利用者は、リース契約に基づいて「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上します。具体的には、以下のようになります。
- 使用権資産:リース期間にわたり、リース物件を使用する権利を表す資産です。これは、固定資産と同様に減価償却の対象となります。
- リース負債:リース物件の対価として将来支払うべきリース料の現在価値を表す負債です。これは、借入金と同様に金利費用が発生します。
この変更により、企業の貸借対照表には、それまで計上されていなかったリース関連の資産と負債が新たに認識されることになります。これにより、企業の負債総額が増加し、自己資本比率などの財務指標に影響を与える可能性があります。また、損益計算書においても、旧基準で計上されていたリース料が減価償却費と金利費用に分解されて計上されるため、費用計上のパターンが変化します。このオンバランス化の原則は、企業の財務実態をより正確に開示し、投資家や債権者にとっての財務諸表の比較可能性と透明性を向上させることを目的としています。
新リース会計基準が企業にもたらす具体的な影響
新リース会計基準の導入は、企業の財務諸表に広範囲かつ具体的な影響をもたらします。特に、これまでオフバランス処理されてきたリース取引が、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の全てに計上されることになるため、企業の財務状況や経営成績の見え方が大きく変わります。この変化は、企業の信用評価、資金調達、さらには事業戦略にも影響を及ぼす可能性があります。
貸借対照表への影響 使用権資産とリース負債
新リース会計基準の最も大きな変更点の一つは、リース取引が貸借対照表に計上される、いわゆる「オンバランス化」です。これにより、企業はリースしている資産を「使用権資産」として資産側に計上し、同時にリース料を支払う義務を「リース負債」として負債側に計上します。
- 使用権資産:リース契約に基づいて、リース物件を使用する権利を表す資産です。これは固定資産と同様に、リース期間にわたって減価償却が行われます。使用権資産の金額は、リース負債の当初認識額に、リース開始日までに支払ったリース料や当初直接費用などを加減して算定されます。
- リース負債:リース料の支払義務の現在価値を負債として計上するものです。この負債は、元本と利息に区分され、リース料の支払いにより元本部分が減少していきます。
このオンバランス化により、企業の総資産と総負債が大幅に増加します。結果として、自己資本比率やD/Eレシオ(負債資本倍率)といった財務指標が悪化する傾向にあります。これは、特に多額のリース契約を抱える企業にとって、財務の健全性評価に直接的な影響を与えることになります。
損益計算書への影響 減価償却費と金利費用
旧基準では、オペレーティング・リースの場合、リース料が賃借料として一括で費用計上されていました。しかし、新基準では、リース取引がオンバランス化されることにより、損益計算書における費用の計上方法が大きく変わります。
- 減価償却費:貸借対照表に計上された使用権資産は、リース期間にわたって減価償却されます。一般的には定額法が適用され、リース期間を通じて一定額の費用が計上されます。
- 金利費用:リース負債に対して発生する金利費用は、利息法により損益計算書に計上されます。利息法では、リース期間の初期に金利費用が多く計上され、期間の経過とともに減少していくため、リース期間の初期に費用が集中する傾向があります。
この結果、新リース会計基準適用後は、従来の「リース料」という単一の費用項目が消滅し、代わりに「減価償却費」と「金利費用」の二つの費用が計上されることになります。特に、リース期間の初期には、旧基準よりも多額の費用が計上されることが多く、企業の営業利益や経常利益に影響を与える可能性があります。
キャッシュフロー計算書と財務指標の変化
キャッシュフロー計算書においても、新リース会計基準は重要な変化をもたらします。旧基準では、オペレーティング・リースのリース料支払いは営業活動によるキャッシュフローとして計上されていました。しかし、新基準では、リース負債の返済が元本部分と利息部分に区分されます。
- 営業活動によるキャッシュフロー:リース負債に係る利息の支払いは営業活動によるキャッシュフローとして計上されるか、または財務活動によるキャッシュフローとして計上されます。また、減価償却費は非資金費用であるため、営業活動によるキャッシュフローの調整項目としてプラスに作用します。結果として、営業活動によるキャッシュフローは改善する傾向にあります。
- 財務活動によるキャッシュフロー:リース負債の元本返済額は、財務活動によるキャッシュフローとして計上されます。これにより、財務活動によるキャッシュフローは悪化する傾向にあります。
これらの変化は、フリーキャッシュフローの計算にも影響を与え、企業の資金調達能力や投資判断に影響を及ぼす可能性があります。また、上述した自己資本比率やD/Eレシオの他にも、ROA(総資産利益率)などの財務指標も変化します。以下に、主要な財務指標への影響をまとめます。
| 指標名 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 | 変化の傾向 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | リース物件は原則オフバランス | リース物件(使用権資産)をオンバランス | 増加 |
| 総負債 | リース債務は原則オフバランス | リース負債をオンバランス | 増加 |
| 自己資本比率 | 高めに算出されがち | 総資産・総負債増加により低下傾向 | 低下 |
| D/Eレシオ (負債資本倍率) |
低めに算出されがち | 総負債増加により上昇傾向 | 上昇 |
| ROA (総資産利益率) |
高めに算出されがち | 総資産増加により低下傾向 | 低下 |
| 営業活動による キャッシュフロー |
リース料全額が支出として計上 | 減価償却費は非資金費用、利息費用は財務活動CFへ | 改善 |
| 財務活動による キャッシュフロー |
影響なし | リース負債の元本返済額が支出として計上 | 悪化 |
これらの財務指標の変化は、企業の信用格付けや金融機関からの借入条件、投資家からの評価に影響を及ぼすため、企業はこれらの変化を正確に把握し、適切な情報開示と説明責任を果たす必要があります。
開示情報に関する新たな要求事項
新リース会計基準では、財務諸表本体だけでなく、財務諸表の注記においても詳細な情報開示が求められます。これは、投資家やその他の利害関係者が、企業のリース活動の実態と財務諸表への影響をより正確に理解できるようにするためです。
具体的には、以下の情報などの開示が義務付けられます。
- リース取引の概要:リース契約の内容やリース資産の種類、リース期間など。
- リース負債の残高:期末におけるリース負債の残高とその内訳。
- 使用権資産の減価償却費:当期に計上された使用権資産の減価償却費。
- リース負債に係る利息費用:当期に計上されたリース負債に係る利息費用。
- 短期リース及び少額リースに関する情報:これらの免除規定を適用した場合の開示情報。
- 将来のリース料総額:未認識のリース料を含む将来の支払リース料の総額とその内訳。
これらの開示情報は、企業のリース戦略や財務リスクを評価する上で不可欠な情報となります。企業は、開示情報を適切に準備し、透明性の高い情報提供を行うことが求められます。
新リース会計基準への実務対応と課題
新リース会計基準の導入は、企業の会計実務に広範な影響を及ぼします。ここでは、企業が直面する具体的な課題と、それらに対する実務的な対応策について詳細に解説します。
会計処理プロセスの変更点と注意点
新リース会計基準の適用により、従来のリース取引の会計処理は大きく変化します。特に、賃貸借処理されていたファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引が、原則として貸借対照表に計上される「オンバランス化」されるため、会計処理プロセス全体の見直しが不可欠です。
まず、リース契約の開始時に、使用権資産とリース負債を認識し、計上する新たな仕訳処理が発生します。使用権資産は、リース期間にわたって減価償却され、リース負債は、利息費用と元本返済に分けて処理されます。これにより、月次・年次の決算業務において、これらの新たな勘定科目の計算と記帳が求められるようになります。
また、リース期間、割引率、残存価額の見積もりは、使用権資産とリース負債の金額に直接影響を与えるため、見積もりの精度と継続的な見直しが重要です。特に、リース期間の決定においては、契約上の期間だけでなく、延長オプションの行使可能性なども考慮する必要があり、判断の複雑性が増します。割引率についても、リース料に含まれる明示的な利率がない場合、借入金利など適切な代替指標を用いることになります。
さらに、使用権資産に対しては、減損会計の適用も検討が必要です。資産の回収可能性を評価し、必要に応じて減損損失を認識するプロセスも、会計処理フローに組み込む必要があります。
リース契約の見直しと管理体制の構築
新リース会計基準への対応には、既存のリース契約の徹底的な見直しと、将来のリース契約に関する管理体制の再構築が不可欠です。
まず、企業が締結している全てのリース契約を洗い出し、新基準におけるリース分類(短期リース、少額リース、変動リース料など)に該当するかどうかを判断する必要があります。特に、オペレーティング・リースとして処理されていた契約の多くが、新基準ではオンバランス化の対象となるため、個々の契約条件を詳細に確認し、会計処理への影響を評価しなければなりません。
次に、リース契約の条件そのものの見直しも重要です。例えば、リース期間が短い契約や少額のリース契約は、簡便法を適用できる可能性があります。そのため、将来のリース契約を締結する際には、新基準の会計処理への影響を考慮した上で、契約期間や金額、オプション条項などを検討することが求められます。
これらの契約情報を正確に管理するためには、一元的なリース管理台帳の整備と、それを運用する管理体制の構築が不可欠です。経理部門だけでなく、法務、調達、情報システムなど、関係する複数の部署が連携し、リース契約の締結から契約変更、終了までのライフサイクル全体にわたる情報を共有・管理する仕組みを構築する必要があります。
適切な管理体制が構築されることで、リース契約に関する情報の漏れや誤りを防ぎ、適時かつ正確な会計処理と開示が可能となります。
会計システムの改修とプロシップなどのソリューション活用
新リース会計基準への対応は、手作業での対応には限界があり、会計システムの改修や専門ソリューションの導入が不可欠となります。
既存システムの課題と対応策
従来の会計システムやERPシステムは、オペレーティング・リースをオフバランス処理することを前提に設計されていることが多く、新リース会計基準で求められる複雑な計算や記帳には対応できないケースがほとんどです。
具体的には、以下のような課題が挙げられます。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 使用権資産・リース負債の自動計算 | リース料総額、割引率、リース期間などに基づき、使用権資産とリース負債の現在価値を自動で計算する機能が不足している。 |
| 減価償却費・金利費用の自動計上 | 使用権資産の減価償却費と、リース負債にかかる金利費用を、リース期間にわたって適切に配分し、自動で仕訳計上する機能がない。 |
| 開示情報の自動生成 | 新基準で求められる詳細な注記情報(リース負債の満期分析、リース料総額など)を、システムから自動で抽出・生成する機能が不足している。 |
| 複数会計基準への対応 | 日本基準とIFRS第16号の双方に対応した計算ロジックやレポート出力機能がない場合がある。 |
| 契約管理の一元化 | リース契約に関する詳細情報(契約開始日、終了日、オプション条項、変動リース料の条件など)を一元的に管理するデータベース機能が不十分。 |
これらの課題に対し、企業は以下のいずれかの対応策を検討する必要があります。
- 既存ERPシステムの機能拡張・カスタマイズ: 現在利用しているERPシステムに、リース会計基準対応のモジュールを追加導入したり、大規模なカスタマイズを行ったりする方法です。既存システムとの連携はスムーズですが、開発コストや期間がかかる可能性があります。
- 専門のリース管理システムの導入: プロシップのような、リース会計基準への対応に特化した専門システムを導入する方法です。複雑な計算や開示要件に標準で対応しており、導入後の運用負荷を軽減できるメリットがあります。
プロシップが提供するリース管理ソリューション
リース会計基準への対応を効率的かつ正確に進めるために、多くの企業がプロシップが提供するリース管理ソリューションの導入を検討しています。プロシップのソリューションは、新リース会計基準(日本基準)およびIFRS第16号への対応実績が豊富であり、以下のような機能を提供します。
- リース契約情報の一元管理: 多数のリース契約に関する情報をデータベースで一元的に管理し、検索や分析を容易にします。
- 自動計算機能: リース料総額、割引率、リース期間などに基づき、使用権資産とリース負債の現在価値を自動で計算します。これにより、手作業による計算ミスをなくし、計算の精度を向上させます。
- 仕訳データ自動生成: 減価償却費、金利費用、リース負債の返済額など、新基準で必要となる複雑な仕訳データを自動で生成し、会計システムへ連携します。
- 開示資料作成支援: 貸借対照表、損益計算書への影響額の算出はもちろん、新基準で求められるリース負債の満期分析や変動リース料、短期リース、少額リースに関する注記情報など、詳細な開示資料の作成を強力にサポートします。
- 複数会計基準への対応: 日本基準とIFRS第16号の両方に対応しており、国際的な事業展開を行う企業においても、一貫したリース会計処理を実現します。
- シミュレーション機能: リース契約条件の変更や新規契約が財務諸表に与える影響を事前にシミュレーションできるため、戦略的な意思決定に貢献します。
プロシップのような専門ソリューションを導入することで、企業は新リース会計基準への対応にかかる業務負荷を大幅に軽減し、正確性と効率性を高めることができます。これにより、経理部門は本来の戦略的な業務に注力できるようになり、企業全体のガバナンス強化にも寄与します。
まとめ
新リース会計基準は、単なる会計処理の変更に留まらず、企業の財務戦略に大きな影響を及ぼす重要な会計基準です。国際財務報告基準(IFRS)第16号との整合性が高く、リース取引の「オンバランス化」を原則とすることで、企業の真の財政状態と経営成績をより正確に財務諸表に反映させることを目的としています。
これにより、貸借対照表には「使用権資産」と「リース負債」が計上され、損益計算書では減価償却費と金利費用が認識されます。結果として、ROAやD/Eレシオといった財務指標にも変化が生じ、投資家や金融機関からの評価にも影響を与え得るでしょう。これは、企業の負債や資産の実態を明確にし、財務情報の透明性を高めるためです。
この新基準への対応には、既存のリース契約の見直し、会計処理プロセスの変更、そして会計システムの改修が不可欠です。プロシップのような専門ソリューションの活用も有効な手段となります。早期かつ適切な準備と対応を進めることで、企業は財務リスクを適切に管理し、透明性の高い財務情報を提供し、企業価値の向上へと繋げることができるでしょう。
※記事内容は実際の内容と異なる場合があります。必ず事前にご確認をお願いします